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【問題作】THE HAUNTED / Unseen|ザ・ホーンテッド / アンシーン

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スウェーディシュ・デスラッシュの重鎮がクリエイティビティとビジネスの間で揺らいだ問題作!

THE HAUNTEDはメロディック・デスメタルのパイオニアのひとつAT THE GATESの中心メンバーのビョーラー兄弟が、同郷の個性派グルーヴメタルバンドMARY BEETS JANEペーター・ドルヴィングをVo.に迎えて結成したバンド。
スウェーディシュ・デスラッシュの草分け的存在で、ネオスラッシュの火付け役とも言えるの彼らですが、その最大の問題作となったのがこの『Unseen』です。

問題作扱いされる理由は?

①.デスラッシュ色が薄れて他の要素が増えた。
②.トレンドに擦り寄るなんて裏切りだ。
③.その原因のペーターが許せない。

とまぁ、単純な話ですね。本来がオルタナティブ志向が強く非メタルシーンでも活動しているペーター・ドルヴィング(Vo.)の影響で音楽性が変わってしまった…として保守派デスラッシャーから大バッシングというわけです。
ちなみにペーターはこのアルバムを最後にバンドを去り、アンダース(ビョーラー兄/Gt.)とペル・モラー・ヤンセン(Dr.)もそれを追うよう脱退してしまいます。

何故こんなことになった?

THE HAUNTEDというバンドを“メロデスバンドのメンバーが結成した単なるいちデスラッシュバンド”として見ていたか、それとも、MARY BEETS JANEの存在をも知っていて“両者の個性がぶつかるコラボレーション”と捉えていたか、そのどちら大きく評価が分かれるのは間違いありません。

前者でさらにメタラーに多い保守的なリスナーだったりすれば、大きな路線変更どころが少し実験的な要素が加わっただけでも「重大な裏切行為だ!」と大騒ぎです。
しかし、ペーターの実績も知っている後者からしてみれば、「当然こうなるよね〜、むしろこれまでがマンネリ過ぎ!」と言うことになります。

ファン層の中で前者の割合が圧倒的に高かったために、起こるべくして起こった事態というわけですね。

実際のところ作品としてはどうなの?

私自身はペーター支持派で「変化上等!」のスタンスということもあり、殿堂入りの1作目を除けばUnseenはもっとも楽しめた作品です。

実際のところこのアルバムは「歴史的な大傑作」とか「時代を変える革命的作品」というレベルのものではありません。
それでも曲はよく練られていますし、どこかで聴いいたことがありそうでいて実は全然違う、独創性にあふれた作品なのは間違い無いでしょう。

メタルコア路線を狙ったというのは、部分的に正解だけど大間違い。
あくまでメタルコア勢の方が過去のエクストリームメタルのサンプリングに終始しているだけのことで、彼らは(ある意味メタルコアへの接近も自覚的に)自分のたちのキャリアを総括的にぶつけ合ったに過ぎないでしょう。

The HAUNTEDは何故Vo.がやたらと入れ替わる?

現在THE HAUNTEDには、同郷のグルーヴメタル系デスラッシュバンドFACEDOWNマルコ・アロがパーマネントVo.として加入しています。
実はTHE HAUNTEDの(Vo.)は、ペーターとこのマルコが以下のように交互に入れ替わりで加入しています。
1作目:ペーター
2~3作目:マルコ
4~7作目:ペーター
8作目~:マルコ
マルコはパワフルではあるものの、やや無機質で直線的な吐き棄てタイプ。実はそれなりにエモく歌えたりもするんですが、ペーターほどの引き出しの多さは感じられません。
デスラッシュスタイルを過不足なくこなすには悪くない人選ですが、音楽性に大きなプラスα期待できるかというと微妙です。

ちなみにペーターはTHE HAUNTED以外にも様々な音楽活動を行っていますし、マルコも脱退時期は即FACEDOWNを再起動させています。

ここから見えて来るのは、
❶バンドと2人のVo.は比較的ビジネスライクな関係と思われること。
❷1st以降マルコに交代するが、おそらく巷で言われている“マルコのツアー嫌い”以外にも何らかの理由(作曲面での貢献度や独創性?)があってペーターを呼び戻したであろうこと。
❸Unseenの反応が悪かったため、きびすを返してオーソドックスなデスラッシュ路線に軌道修正を図ったこと。

ビョーラー兄とヤンセンは何故後追い脱退した?

ここから先はあくまで推測ですが、バンドメンバーのその後の動向からさらに見えてくるものもあります。

Unseenリリース後に再度ペーターが脱退し、それを追うように長年パーマネントメンバーだったビョーラー兄(Gt.)とP・ヤンセン(Dr.)もバンドを抜けます。
さらにビョーラー兄は、再結成して活動していたAT THE GATESまでも脱退してしまいます。

その後のこの2人はといえば、ビョーラー兄はソロ作をリリース、これはポストロック/プログレ色が強くデスラッシュ要素皆無のインストアルバム(なかなかの好盤)、一方のP・ヤンセン参加のプロジェクトは何とクラブ系ソウル/人力ハウスとでもいった畑違いのサウンドでした。

この動きからも少なくともビョーラー兄は、もしかすると2人ともがバンドに音楽的変化/探求を求め、ペーターにその役割を期待していたいたのでは無いか?ということがうかがえます。

いわゆる音楽性の相違での分裂?

結局のところ、The Hauntedで音楽的な実験/探求を試みたいペーター(Vo.),ビョーラー兄(Gt.),P・ヤンセン(Dr.)の改革派と、デスラッシュ一筋でその路線を貫きたい、あるいは安定した需要が見込めるジャンルでしのいでいくため余計なことをしたくないビョーラー弟(Ba.)・エイドリアン(Gt.)組の保守派、という対立構造が早い時期からあったのでしょう。

2代目(Vo.)にマルコを迎えたはいいけれど、ワンパターンな作風に限界を感じた改革派がペーター復帰に乗じてオルタナティブな方向性を追求するもファンの不評を買う。

それを以前のスタイルに軌道修正したい保守派が巻き返したため、改革派は新しい可能性を求めて脱退。

と言うのがUnseen騒動までの流れとその顛末、というのはそんなに的外れな推理では無いと思います。

THE HAUNTED / Unseen
問題作度:★★★☆☆
一般評価:★☆☆☆☆
筆者評価:★★★★☆

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