Contents
- 1ヴァイオリンを前面にフィーチャーした、独自のアトモスフェリックでダウナーな暗黒耽美メタル・サウンドを創造して、英国ゴシックメタルの黎明期を彩った異能派グループ!
- 1...1パラロス・フォロアーにしてゴシックメタルのパイオニア!?
- 1...2MY DYING BRIDEの特徴的なポイントは!?
- 1...3MY DYING BRIDEの音楽性の変遷は!?
- 1...4MY DYING BRIDEの現在の活動状況は!?
- 1.1MY DYING BRIDE|DISCOGRAPHY
- 1.1.1As the Flower Withers|アズ・ザ・フラワー・ウィザーズ
- 1.1.2Turn Loose the Swans|ターン・ルース・ザ・スワンズ
- 1.1.3The Angel and the Dark River|ジ・エンジェル・アンド・ダーク・リバー
- 1.1.4Like Gods of the Sun|ライク・ゴッズ・オブ・ザ・サン
- 1.1.534.788%... Complete|34.788%... コンプリート
- 1.1.6The Light at the End of the World|ザ・ライト・アット・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド
- 1.1.7The Dreadful Hours|ザ・ドレッドフル・アワーズ
- 1.1.8Songs of Darkness, Words of Light|ソング・オブ・ダークネス,ワーズ・オブ・ライト
- 1.1.9A Line of Deathless Kings|ア・ライン・オブ・ダークネス・キングス
- 1.1.10For Lies I Sire|フォー・ライズ・アイ・シュアー
- 1.1.11Evinta|エヴィンタ
- 1.1.12A Map of All Our Failures|ア・マップ・オブ・オール・アウァ・フェイルールス
- 1.1.13Feel the Misery|フィール・ザ・ミザリィ
- 1.1.14The Ghost of Orion|ザ・ゴースト・オブ・オライオン
- 1.1MY DYING BRIDEはコレを聴け!! ライターおすすめアルバム!
- 1.1.14.1MY DYING BRIDEの代表作は!?
- 1.1.14.2ビギナー向けのMY DYING BRIDEの代表作は!?
- 1.1.14.3エクストリーム・メタラー向けのアルバムは!?
- 1.1.14.4新し目のアルバムのオススメは!?
MY DYING BRIDE|DISCOGRAPHY
As the Flower Withers|アズ・ザ・フラワー・ウィザーズ
オリジナルアルバム 1作目 (1992年)
この1stアルバムの時点では、先達のPARADISE LOSTや同期のANATHEMAらのデビュー作と同様に、ドゥーミィなデスメタルをベースとしてゴシカルな耽美要素をまぶした、エクストリームなゴシックメタル・サウンドを聴かせています。
本作には、同時期のゴシックメタル第一世代の中でも特にデスメタル色が濃厚で、ヴォーカルのデスヴォイスはもちろんのこと、T-05などでは、ブラストビートによる疾走パートも交えたスタイルを展開しています。
一方で、T-02のような耽美路線の名曲もあり、ヴァイオリンやシンセサイザーもこの頃からすでにフィーチャーされていますが、ヴァイオリンは後のようにメイン楽器として楽曲の柱となるまでには至っておらず、ときおり効果的に挿入される程度にとどまっています。
MY DYING BRIDEはゴシックメタル黎明期の中でも、特にグルーミィでダウナーなアトモスフェアに主軸を置いたグループですが、ここでは、そこにブラストパートまでもが交えられていることによって、楽曲にメリハリとダイナミズムを持たせています。
また、良く言えばプログレッシヴともアバンギャルドともいえる無軌道で雰囲気重視のサウンドを、どこまでが計算かわからないセンスの良いフレーズやアイデアで聴かせる…というスタイルはこの頃から健在です。
初期のANATHEMAが、一聴するとマニアックに感じられながら、その実オーソドックスで明快なロック・ミュージック的起承転結を持った作風であり、抜群の作曲センスをそこに結実させていたことと比較すると、ある意味では真逆の特性でありアプローチであるとも言えます。
|叙情度:★★☆☆☆
|暗黒度:★★★☆☆
|ヘヴィ度:★★★★☆
|実験度:★★★☆☆
|総合評価:★★★★☆
代表作 通好み 実験作
Turn Loose the Swans|ターン・ルース・ザ・スワンズ
オリジナルアルバム – 2作目 (1993年)
バイオリンをパーマネントメンバーに加え、ギターに匹敵するバンドの需要パートとして全編にわたって本格的にフィーチャー。
2作目ながら、バンドとしてのベーシックな作風については、良くも悪くもここからほとんど変化は見られないほどに仕上がっています。
MY DYING BRIDE流のゴシックメタルが、高いレベルで完成されていることもあってか、初期の代表作としてオールタイム・ベストに推されることも多いアルバムです。
当時、ゴシックメタルやメロディック・デスメタルなどの、耽美派エクストリーム・サウンドに対して用いられていた表現に、「美醜の対比」や「美醜の融合」といったワードがありますが、彼らはそれをヘヴィでドゥーミィなパートと流麗でメランコリックなパートの対比、禍々しいなデスヴォーカルと気だるげなクリーンヴォーカルの対比、というかたちで表現しています。
この手法は、今でこそ米国メインストリームのニューメタルやメタルコア、ビジュアル系やJ-POPなどでも日常的に用いられる手垢のついたものとなっていますが、この時点では「そのうち誰かやるだろう…」と予想はされていたものの、まだまだ画期的で先進的な表現といえるものでした。
本作をもって、現在まで繰り返されるMY DYING BRIDEとしての基本モードであり、後発のゴシックメタルやメロディック・デスメタル、フューネラル・ドゥームと呼ばれる初期ゴシックメタル・リバイバルにまで、綿々と受け継がれるひとつのフォーミュラが、完成に至ったと言っていいでしょう。
|叙情度:★★★★☆
|暗黒度:★★★★☆
|ヘヴィ度:★★★☆☆
|実験度:★★★★☆
|総合評価:★★★★★+
殿堂入り 代表作 入門盤 通好み スルメ盤 実験作
The Angel and the Dark River|ジ・エンジェル・アンド・ダーク・リバー
オリジナルアルバム – 3作目 (1995年)
MY DYING BRIDEは、同期に活動していたゴシックメタル黎明期のグループの中では、最も音楽的な変化や多様性に乏しい印象があります。
実際のところ、それは紛うことなき事実ではあるのですが、それでも、彼らは彼らなりのペースで微妙に作風を変え、微妙に実験的な試みを行ってもおり、本作から続く数作については、特にそれが比較的活発だった時期ににあたります。
ディストーションの効いたメタルギターによるドゥーミィなサウンドは、これまでどおりに健在ですが、揺蕩うようなゆったりした曲調と、より悲痛な情感と叙情性を強めた、耽美表現を重視したパートが目立つようになりました。
ロック/メタル的な明快なドラマ性のある曲調よりも、アトモスフェアに主眼が置かれた作風については、ここでも全く変化が見られないので、そのリスナーを選びがちなスタイルも、もはや彼らの個性と割り切るほかないでしょう。
それでも、楽曲単位ではあまり頭に残ることは無いものの、印象的なフレーズ自体は多く散りばめられていることで、飽きずにストレスなく聴きとおせるため、ビギナーにも手を出しやすい仕上がりのアルバムでもあり、代表作に挙げられることが多いのも納得の1枚です。
|叙情度:★★★★☆
|暗黒度:★★★★☆
|ヘヴィ度:★★☆☆☆
|実験度:★★★★☆
|総合評価:★★★★★+
殿堂入り 代表作 入門盤 賛否両論 通好み スルメ盤 実験作
Like Gods of the Sun|ライク・ゴッズ・オブ・ザ・サン
オリジナルアルバム – 4作目 (1996年)
MY DYING BRIDEが、ゴシックメタルのシーンにおいて得難い個性を持った存在であることは、多くのリスナーが認めるところ。
その反面、彼らにとっては飛び道具でもあるバイオリンの攻撃力に依存しがちだったり、アトモスフェリックな作風をエクスキューズにしたりで、楽曲自体の練り込みがおろそかになる部分があることも、否定できませんでした。
しかし、本作を聴く限りでは、彼らがその弱点を意識しており、決して顧みなかったわけでは無いことがうかがえます。
作品を構成する各要素については、これまでの作品と同様ですし、サウンドの質感や基本的な作風もほぼ前作から大きな変化ありません。
しかし、他の作品と比較すると個々の楽曲はいくらかコンパクトになっていますし、初期のANATHEMAやPARADISE LOSTを思わせるような、ロック的なメリハリとダイナミズムを意識した曲調がいくぶん目立つこともあって、全体的に、彼らにしては楽曲重視ともいえる作風になっています。
直近の2作と比較すると、ヴァイオリンのフィーチャー度合いがやや控えめで、その分だけキーボードが、主張し過ぎない程度に効果的に働いていることも、変化を与えています。
これらの要因から、従来の彼らの作風がゴシック的アトモスフェアの垂れ流しに感じられて、敬遠しがちだったリスナーでも、比較的抵抗が少なく入りやすい仕上がりとなっており、初期ゴシックメタルの中では、やや玄人向けで聴き手を選びがちなMY DYING BRID作品の中では、最もビギナー・フレンドリーな意欲作とも言えます。
|叙情度:★★★★☆
|暗黒度:★★★★☆
|ヘヴィ度:★★★☆☆
|実験度:★★★★☆
|総合評価:★★★★★
殿堂入り 代表作 入門盤 賛否両論 実験作
34.788%… Complete|34.788%… コンプリート
オリジナルアルバム – 5作目 (1998年)
MY DYING BRIDEのカタログ中では、おそらく最大の異色作で問題作とされているであろうアルバムで、「M.D.B.作品はどれも同じに聴こえる。」…というライトリスナーであっても、一聴しただけで「これはいつもと違う!」と感じられるほどです。
本作は、MY DYING BRIDEサウンドの代名詞として、これまで重要な役割を果たしていたヴァイオリンが抜けて、基本の楽器パート以外はサポートのキーボードのみという新体制によるもの。
楽曲にエレクトロニック要素を強めて、ヴォーカルにエフェクトを加えたり、EDM風のサウンドやトリップホップ風の楽曲まで繰り出してくる…といった、実験要素に満ちています。
これらの打ち込み要素が影響したわけでもないでしょうが、日本盤はあの悪名高い『エイベックス』からのリリースとなっていました。
これは、同じゴシックメタル第1世代…PALADISE LOST,ANATHEMA,TIAMAT,THE GATHERINGらの、ラディカルな音楽的変遷と比較すれば、ほんのささやかな試みに過ぎませんが、本来が実験性や音楽的ボキャブラリィに乏しい彼らのキャリアの中では、大冒険レベルのチャレンジといえます。
楽曲には再び長尺化の傾向が顕著で、前作ほどコンパクトなつくりではありませんが、“困った時のヴァイオリン”がもう存在しないこともあってか、作風の多様性と曲ごとの作り込みに尽力した跡が見られ、その点においても明らかに他の作品を上回っています。
作品の完成度としては、間違いなく全カタログ中でもトップクラスの仕上がりで、ヴァイオリンをはじめとした従来の“らしさ”の欠如をマイナス要因としなければ、ベストに挙げても全く問題ないほどの充実ぶりです。
|叙情度:★★★★★
|暗黒度:★★★☆☆
|ヘヴィ度:★☆☆☆☆
|実験度:★★★★★
|総合評価:★★★★★+
殿堂入り 代表作 賛否両論 通好み 実験作
The Light at the End of the World|ザ・ライト・アット・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド
オリジナルアルバム – 6作目 (1999年)
|叙情度:★★★★☆
|暗黒度:★★★★☆
|ヘヴィ度:★★★★☆
|実験度:★★☆☆☆
|総合評価:★★★☆☆
入門盤 賛否両論
The Dreadful Hours|ザ・ドレッドフル・アワーズ
オリジナルアルバム – 7作目 (2001年)
|叙情度:★★☆☆☆
|暗黒度:★★★☆☆
|ヘヴィ度:★★★★☆
|実験度:★★☆☆☆
|総合評価:★★★☆☆
入門盤 賛否両論
Songs of Darkness, Words of Light|ソング・オブ・ダークネス,ワーズ・オブ・ライト
オリジナルアルバム – 8作目 (2004年)
|叙情度:★★☆☆☆
|暗黒度:★★★☆☆
|ヘヴィ度:★★★★☆
|実験度:★★☆☆☆
|総合評価:★★☆☆☆
入門盤 賛否両論 お布施
A Line of Deathless Kings|ア・ライン・オブ・ダークネス・キングス
オリジナルアルバム – 9作目 (2006年)
|叙情度:★★☆☆☆
|暗黒度:★★★☆☆
|ヘヴィ度:★★★★☆
|実験度:★☆☆☆☆
|総合評価:★★☆☆☆
入門盤 賛否両論 お布施
For Lies I Sire|フォー・ライズ・アイ・シュアー
オリジナルアルバム – 10作目 (2009年)
|叙情度:★★☆☆☆
|暗黒度:★★★☆☆
|ヘヴィ度:★★★★☆
|実験度:★☆☆☆☆
|総合評価:★★☆☆☆
入門盤 賛否両論 布施
Evinta|エヴィンタ
オリジナルアルバム – 11作目 (2011)
A Map of All Our Failures|ア・マップ・オブ・オール・アウァ・フェイルールス
オリジナルアルバム – 12作目 (2012年)
|叙情度:★★☆☆☆
|暗黒度:★★★★☆
|ヘヴィ度:★★★★☆
|実験度:★★★☆☆
|総合評価:★★★★☆
入門盤 賛否両論 実験作
Feel the Misery|フィール・ザ・ミザリィ
オリジナルアルバム – 13作目 (2015年)
|叙情度:★★★☆☆
|暗黒度:★★★★☆
|ヘヴィ度:★★★☆☆
|実験度:★★★☆☆
|総合評価:★★★★☆
入門盤 賛否両論 実験作
The Ghost of Orion|ザ・ゴースト・オブ・オライオン
オリジナルアルバム – 14作目 (2020)
本来が、さほど豊富ともいえない音楽的ボキャブラリーだけでやりくりして、密度の低い作品をヒネリ出す時期が長く続いていた彼らですが、近年のメンバーチェンジからの影響のほどは不明ですが、ここに来てやや流れが変わった印象があります。
成功しているかはともかくとして、前作あたりからは、新たにインプットしてきたものを、積極的に作品にアウトプットしているフシが見られるようになりました。
結論から言うと、本作においてはそれが良いかたちで結実しており、比較的多彩な作風を持った曲が並んで目新しさも感じられますし、個々の楽曲の完成度も上々で、ゼロ年代以降の作品群の中では楽しめるアルバムに仕上がっています。
MY DYING BRIDEというバンドは、ヘヴィ&スローなダウナー・サウンドの上に、アーロン・スタインソープのヘタウマ脱力ヴォーカルが重なりさえすれば、それだけでいつもの音に聴こえてしまうくらいの、アクの強さを持っています。
それがメリットでもデメリットでもあるのですが、このアルバムでは、そこにもうひとつの大きな特徴であるヴァイオリンによる定番の味付けが加わってなお、ハッキリと「本作はいつもと違う!」と思わせるだけの仕上がりを見せています。
しかしながら、今回の作品上にアウトプットされた要素には、最近のPARADISE LOSTに近いアプローチだったり、時には軽くAMORPHISなどの北欧勢を思わせたりと…いった、ご同輩の過去のアプローチを元にしたものが目立つのも事実です。
そのため、“借り物感”と“らしさ”がせめぎあっていることは否めませんが、彼らのアルバムとしては、久しぶりに熱心なサポーター以外にも一聴をススメられる1枚です。
|叙情度:★★★★☆
|暗黒度:★★★☆☆
|ヘヴィ度:★★★☆☆
|実験度:★★★☆☆
|総合評価:★★★★★
代表作 入門盤 賛否両論 実験作