様々な音楽性を取り入れながらもヘヴィネスとエクストリミティを追求して情報量の増した高密度で破壊力抜群の新世代サウンドを完成させたニューメタル第3世代の革新的グループ!!
米国のメインストリームミュージックとして一世を風靡した、ミクスチャー/ラップメタル系ニューメタルの隆盛を経て、新たなるモードとしてニューメタルシーンを塗り替えたのが、SLIPKNOTやSYSTEM OF A DOWNなどに代表される、よりエクストリームでカオティックなスタイルです。
前後してニューメタルシーンに参入してきた、ニュースクール系メタリックハードコアやスクリーモ系のグループともども、次世代のニューメタル/エクストリームメタルとして注目集めます。
これもまた、ある意味ではミクスチャーと言えるメソッドで、これまでのグルーヴメタル〜ニューメタルの様々なスタイルのみならず、デスメタルやエクストリームなプログレッシヴメタルなど、あらゆるエッセンスを取り入れたスタイルです。
様々な音楽的要素を融合させ、複雑な曲展開を持った情報量の多く重層的な高密度/高圧力サウンドが特徴で、ある意味では90年代エクストリームメタルの総決算ともいえるものでした。
しかし、デビュー時のインパクトは強烈だったもののその登場自体がひとつの頂点で、メインストリームでの発展性は薄い音楽性だったことからそのピークはさほど長いものではなく、メロディーやエモーショナルな歌唱の導入などポピュラリティーのあるスタイルへと退行に近い進化を見せていくことになります。
一部の先鋭的なグループなどは、そのスタイルでひと通りやり尽くしたこともあってか、余力を残して活動停止の道を選ぶこともありました。
エクストリーム系ニューメタル第3世代の代表的アーティスト
SLIPKNOT|スリップノット
SLIPKNOTは、一介のローカルデスメタル/デスコアグループだった時期にロス・ロビンソンの目に止まり、そのプロデュースのもと彼が手がけたこれまでのニューメタルメソッドを全てクロスオーバーすることで生まれた、ロスロビサウンド最終形態ともいえるスタイルを持ったグループ。
その完成度の高い高密度型ハイブリッドエクストリームメタルサウンドと、メンバーがフリーキーなホラー映画風マスクを身につけた、キャッチーなギミックが受けて瞬く間にブレイク。SYSTEM OF A DOWNと並んで、ラップメタル全盛を打ち破る新たなニューメタルの旗手として、新世代を牽引する存在となります。
2ndでは彼ら本来のデスメタル寄りのサウンドに移行しますが、人気は高まって確固たる地位を築いたことで、ロス・ロビンソンの手を離れバンド主導の音楽性を試みるようになります。
メンバー個別の活動も増えてゆきますが、クリエイティブ面ではあらゆる意味で1stを超えるものは生み出せていません。
SYSTEM OF A DOWN|システム・オブ・ア・ダウン
SYSTEM OF A DOWNは、これまであまり知られていなかったアルメニア出身のグループで、第3世代のエクストリーム系ニューメタルではSLIPKNOTと並ぶ存在感を示しました。
1990年前後のイギリスで、UKエイジアン/バングラ系と呼ばれるバングラディシュ/インド系のアーティストが注目を集めたことがありましたが、SYSTEM OF A DOWNの登場時もこれと同じように、米国アルメニアコミュニティのミュージシャンによる、民族音楽要素も交えてエスニシティを打ち出したサウンドがスポットライトを浴びていた時期に登場し、その時代とシーンを代表する存在となります。
基本的なメソッドはSLIPKNOTに近いものでありながら、より幅広い音楽的バックボーンと卓越した技量とセンスで、プログレッシヴとも表現可能な先鋭性と強固なオリジナリティを持ったサウンドを作り上げ、キッズのみならず百戦錬磨のベテランや非メタル系の音楽リスナーまで幅広い層を魅了します。
SYSTEM OF A DOWNとしてはやるべきことはやり尽くしたこともあり、バンドは活動停止してメンバーごとのリーダー作やソロ作のリリースなど個別の活動を続けています。
MUDVAYNE|マッドヴェイン
SLIPKNOTやSYSTEM OF A DOWNに続くフォロアーの筆頭格で、メンバーごとの独自のメイクやマスク,コスプレ系衣装といったあたりのコンセプトも共通していますが、サウンド面ではそれらの一派の中でも特に強い独自性を持ったグループです。
サウンドテクスチャーなどの音作りは確かにニューメタルをベースとしていますが、テクニカルで複雑な構成の楽曲はむしろプログメタルに近いもので、音圧とテンションが高いだけの類型的なスタイルが続出するこのシーンのではなかなか類を見ないものでした。
ところが、メジャーブレイク後に色気を出してしまい、基本路線は変わらないものの初期のフリーキーなセンスとテクニカルサウンドが影を潜めて、歌メロ要素を強めたニューメタルトレンドに接近していったため、彼らならではの持ち味と魅力は薄れてゆき、類型的なサウンドに成り下がってしまいます。
AMEN|エイメン
ニューメタルシーンの顔役プロデューサーロス・ロビンソン(ROSS ROBINSON)が、SLIPKNOTに続くとして送り出したグループ。
その音作りこそSLIPKNOT以降のスタイルをまとったものですが、彼らのベーシックなスタイルはもっとパンキッシュでロッキンなハードコアサウンド。そこがニューメタルリスナーには賛否が分かれるポイントとなった上、本来届けるべきリスナーに届かなかったことでやや通好みな存在となりセールスもやや伸び悩みました。
しかし、それが彼らの独自性で持ち味でもあることも確かで、アルバムを重ねるごとにロック色を強めて音作りもハードコア寄りになり、ビジュアルイメージもパンキッシュなものになっていきます。
このイメージチェンジでリスナー層にが変わったことが功を奏してか、米国のトレンド系ニューメタルとしては珍しく、英国シーンでもかなり高い評価を得ていました。
AMERICAN HEAD CHARGE|アメリカン・ヘッド・チャージ
AMERICAN HEAD CHARGEは、レゲエ/ダブユニットのAFULICAN HEAD CHARGE(アフリカン・ヘッド・チャージ)に酷似したバンド名を持つグループ。本人たちいわく元祖の存在を知らなかったらしいですが、いくらなんでもそれは無いかと思われます。
当初はインディーズレーベルに所属しローカルシーンで活動していましたが、SYSTEM OF A DOWNのサポートについた縁でプロデューサーリック・ルーヴィン紹介されたことでメジャーデビューを果たします。
プログラミング/サンプリング担当がいることからインダストリアルメタルに分類されることもありますが、打ち込みは装飾程度にすぎず、基本は第3世代の主流をなすエクストリームスタイルのニューメタルバンドです。
リック・ルーヴィンプロデュースのメジャーデビュー作は、独自性こそ薄いもののクオリティの高さと安易なエモ・メロにハシらないストイックなサウンドが評価されます。その後もニューメタル二軍トップくらいの位置にはつけていましたが、サウンドは次第に類型的なものになってゆきます。
DEMON HUNTER|デーモン・ハンター
DEMON HUNTERは、米国クリスチャンメタルシーンから登場したニューメタルバンド。
グラムメタルのSTRYPER(ストライパー)やドゥームメタルのTROUBLE(トラブル)あたりに端を発したクリスチャンメタルですが、今ではスラッシュ/デスからニューメタルに至るまでの各種エクストリームメタルにも手を広げています。
クリスチャンバンドは、後追いが多いためムーヴメントの旬を逃しがちですが、メッセージやポリティカルな部分を置いておけるなら、意外にもクオリティが高くユニークな作風が多いので、聴かず嫌いで済ますには惜しいジャンルです。
彼らの作風は終始オリジナリティに乏しいものでしたが、品質についてはかなりハイクオリティなエクストリーム系ニューメタルを作り上げていおり、クリスチャンチャート以外の一般のヒットチャートでも上位ランカーとなりました。
彼らが米軍に協力して音源を提供したことにより、それがイラクでムスリム捕虜拷問用音楽として使われたことでも知られています。
ONE MINUTE SILENCE|ワン・ミニット・サイレンス
ONE MINUTE SILENCEは、英国出身のポリティカルなミクスチャーバンド。
ラップメタルとしてカテゴライズされがちなグループではありますが、ヴォーカルスタイル以外にはHIPHOPの影響はさほど濃厚ではありません。同期のSYSTEM OF A DOWN同様に、KORN系やLIMP BIZKIT系から次のフェーズに移った新世代ならではのスタイルを持っており、楽曲もHIPHOPフォーマットよりもロック/ヘヴィーメタルフォーマットにのっとったものが多く見られます。
USサウンドとはひと味違ったUKスタイルが日本でも一時期は注目を集めますが、初期のハイテンションサウンドを維持できなかったためか、アンチUSの気風が強い英国シーンで米国トレンドのニューメタルとして活動に苦戦したのかアルバム3枚を残して解散。
2013年の復活作では、TOOLにも近いオルタナプログレサウンドに接近。さらにダブステップなどのEDMスタイルを取り入れるなど、幅を広げた作風を見せました。