Contents
- 1激動の“'R1990”のヘヴィミュージック革命期を彩った重要ジャンルのひとつ『ミクスチャー・ロック』『ミクスチャー・メタル』を徹底考察!!
- 1.1『ミクスチャー』ジャンルの基礎知識!!
- 1.1.1『ミクスチャー』とはどういう意味!?
- 1.1.2『ミクスチャー』ジャンルの音楽性は!?
- 1.1.3『ミクスチャーロック』は日本でしか通じない呼び名!?
- 1.1.3.1『ミクスチャーロック』は欧米ではどう呼ぶ??
- 1.1.3.2『ミクスチャー』に代わるワードは存在しない??
- 1.2時代/世代で違う!?『ミクスチャー』の移り変わり!!
- 1.3『ミクスチャー』ジャンルの音楽性の変遷!!
- 1.3.160〜70年代 … ロック/ハードロックのいちスタイル!?
- 1.3.270〜80年代 … ニューウェイヴからオルタナティヴへ!?
- 1.3.380年〜90年代 … ミクスチャー/ファンクメタルがメインストリームに!?
- 1.3.490年〜00年代 … ラップメタルブームでニューメタルが覇権を握る!?
- 1.3.500年代〜 … 多様化と細分化が進んだボーダーレス状態!?
- 1.3.5.1シーンの停滞と枯渇で複合ハイブリッド/ミクスチャーが主流に!?
- 2各国ミクスチャー事情と重要バンド紹介:Chapter.1
- 2.1アメリカの代表的ミクスチャー・バンド:ジャンル別
- 2.2アメリカ|United States|オルタナティヴ・ロック系 第1世代:6選
- 2.2.101:THE RED HOT CHILI PEPPERS|レッド・ホット・チリ・ペッパーズ
- 2.2.202 FAITH NO MORE|フェイス・ノー・モア
- 2.2.303 :BEASTY BOYS|ビースティ・ボーイズ
- 2.2.404:LIVING COLOUR|リヴィング・カラー
- 2.2.505:FISHBONE|フィッシュボーン
- 2.2.606:PRIMUS|プライマス
- 3各国ミクスチャー事情と重要バンド紹介:Chapter.2
- 3.1アメリカ|United States|オルタナティヴ・ロック系 第2世代:9選
- 3.1.101:RAGE AGAINST MACHINE|レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン
- 3.1.202:LIMBOMANIACS|リンボーマニアックス
- 3.1.303:CONSOLIDATED|コンソリデイテッド
- 3.1.404:HARD CORPS|ハード・コープス
- 3.1.505:PROPER GROUNDS|プロパー・グラウンズ
- 3.1.606:SHOOTYZ GROOVE|シューティーズ・グルーヴ
- 3.1.707:G. LOVE & SPECIAL SAUCE.|ジー・ラヴ・アンド・スペシャル・ソース
- 3.1.808:SINISTER DANE|シニスター・デーン
- 3.1.909:THE BLOODHOUND GANG|ブラッド・ハウンド・ギャング
- 4各国ミクスチャー事情と重要バンド紹介:Chapter.3
- 4.1アメリカ|United States|メタル系:6選
- 4.1.101:MORDRED|モードレッド
- 4.1.202:EXTREME|エクストリーム
- 4.1.303:MIND FUNK|マインド・ファンク
- 4.1.404:SCATTERBRAIN|スキャッターブレイン
- 4.1.505:SWEATY NIPPLES|スウェッティ・ニップルズ
- 4.1.606:T-RIDE|ティー・ライド
- 5各国ミクスチャー事情と重要バンド紹介:Chapter.4
- 5.1アメリカ|United States|ハードコア系:7選
- 5.1.101:BAD BRAINS|バッド・ブレインズ
- 5.1.202:BIOHAZARD|バイオハザード
- 5.1.303:DOG EAT DOG|ドッグ・イート・ドッグ
- 5.1.404:INFECTIOUS GROOVES|インフェクシャス・グルーヴス
- 5.1.505:ORANGE 9mm|オレンジ・ナインミリメーター
- 5.1.606:DOWNSET|ダウンセット
- 5.1.707:BIG CHIEF|ビッグ・チーフ
- 6各国ミクスチャー事情と重要バンド紹介:Chapter.5
- 6.1アメリカ|United States|ヒップホップ系:5選
- 6.1.101:BODY COUNT|ボディ・カウント
- 6.1.202:Boo-Yaa T.R.I.B.E.|ブー・ヤー・トライヴ
- 6.1.303:SX-10|エスエックス・テン
- 6.1.404:EVERLAST|エヴァーラスト
- 6.1.505:OUTKAST|アウトキャスト
- 7各国ミクスチャー事情と重要バンド紹介:Chapter.6
- 7.1アメリカ|United States|コラボレーション系:4選
- 7.1.101:RUN DMC|ラン・ディー・エム・シー+AEROSMITH|エアロスミス
- 7.1.202:ANTHRAX|アンスラックス + PUBLIC ENEMY|パブリック・エネミィ
- 7.1.303:BLACK SABBATH|ブラック・サバス + ICE-T|アイス・ティー
- 7.1.404:JUDGEMENT NIGHT|ジャッジメント・ナイト:サウンドトラック』
- 8各国ミクスチャー事情と重要バンド紹介:Chapter.7
- 8.1世界各国の代表的ミクスチャー・バンド:地域別
- 8.2イギリス|United Kingdom:7選
- 8.2.101:POP WILL EAT ITSELF|ポップ・ウィル・イート・イットセルフ
- 8.2.202:DUBWAR|ダブウォー
- 8.2.303:SENSER|センサー
- 8.2.404:Fun-Da-Mental|ファン・ダ・メンタル
- 8.2.505:ASIAN DUB FOUNDATION|エイジアン・ダブ・ファウンデイション
- 8.2.606:SKUNK ANANSIE|スカンク・アナンシー
- 8.2.707:DISCHARGE|ディスチャージ
- 9各国ミクスチャー事情と重要バンド紹介:Chapter.8
- 9.1ヨーロッパ主要国|Europe:9選
- 9.1.101:GUNJAH|ガンジャ|ドイツ
- 9.1.202:HUMUNGOUS FUNGUS|ドイツ
- 9.1.303:F.F.F.(Fédération Française de Fonck)フェデレーション・フランセーズ・デ・フォンク|フランス
- 9.1.404:URBAN DANCE SQUAD|アーバン・ダンス・スクアッド|オランダ
- 9.1.505:CLAWFINGER|クロウフィンガー|スウェーデン
- 9.1.606:MINDJIVE|マインドジャイヴ|スウェーデン
- 9.1.707:WALTARI|ワルタリ|フィンランド
- 9.1.808:NEGU GORRIAK|ネグ・ゴリアック:スペイン/バスク
- 9.1.909:DISCIPLIN A KITSCHME|ディシプリン・キッチャメ:セルビア
- 10各国ミクスチャー事情と重要バンド紹介:Chapter.9
- 10.1中南米|Latin America:2選
- 10.1.101:NAÇÃO ZUMBI (CHICO SCIENCE & NAÇÃO ZUMBI)|ナサオ・ズンビ
- 10.1.202:MOLOTOV|モロトフ
- 10.2日本その他:Japan & others 7選
- 10.2.101:SUPERGROOVE|スーパー・グルーヴ:ニュージーランド
- 10.2.202:COCOBAT|ココバット:日本
- 10.2.303:THE MAD CAPSULE MARKETS|マッド・カプセル・マーケッツ:日本
- 10.2.404:WRENCH|レンチ :日本
- 10.2.505:SUPER JUNKY MONKEY|スーパー・ジャンキー・モンキー:日本
- 10.2.606:LÄ-PPISCH|レピッシュ|日本
- 10.2.707:JAGATARA|じゃがたら
各国ミクスチャー事情と重要バンド紹介:Chapter.7
世界各国の代表的ミクスチャー・バンド:地域別
一般に、ミクスチャーロックのムーヴメントの変遷や代表的バンドについては、ほぼアメリカ勢だけで語り尽くされている印象があります。
確かに、ミクスチャーロックの中心地であるアメリカは、さすがに本場だけあって層の厚さや密度については他の地域は比較になりません。
しかし、アメリカに対抗しうるロック文化を持つイギリスは、70〜80年代から独自のミクスチャー・カルチャーを持つかなりのミクスチャー先進国。
その他ヨーロッパ各国やそれ以外の地域も、後追い的な傾向が強いとはいえ注目すべき個性派やハイレベルな実力派バンドが登場しており、ミクスチャーを深掘りするならば確実に押さえておく必要があります。
ここでは、それらアメリカ以外のミクスチャーシーンと、代表的バンド/要チェックバンドについて解説していきます。
イギリス|United Kingdom:7選
イギリスは、米国のトレンドへの追従は“ワナビー”扱いで過小評価される傾向があるためか、本格的なUSスタイルの『ミクスチャー』バンドはあまり見られませんでした。
しかし、古くから盛んなレゲエ, ダブ, スカを、ロックに取り入れたアプローチは、UKロック伝統芸ともいえるものですし、ソウル, ハウスなどのクラブ・ミュージックを取り入れた『マッドチェスター』や『アシッドジャズ』の一部などにも、“クラブ・ロック”とでも呼ぶべき独自のミクスチャー・サウンドは存在しています。
70〜80年代の段階から、これらがUKロックシーンの中で一大勢力を築いていましたが、90年代に突入して『ミクスチャー』全盛期になると、それらを発展させつつUSオルタナ系のサウンドも取り入れた、英国流『ミクスチャー』と呼べるグループも登場するようになります。
これらの『UKミクスチャー』のシーンは、さすがにアメリカと比較すると規模は小さく、アーティストの多くは必ずしも正当な評価を得たとは言えませんが、トレンドの傍流として忘れ去るには惜しい個性的なバンドが少なからず存在していました。
01:POP WILL EAT ITSELF|ポップ・ウィル・イート・イットセルフ
アルバムデビュー:1987年
ロックにEDM/インダストリアルなどのエレクトロニック要素を取り入れたサウンドを軸に、ラップヴォーカルをはじめとしたヒップホップ,ファンク,レゲエなどブラックミュージックの要素を組み合わせたスタイルを持つ、UKミクスチャーのいち形態を確立したグループ。
そのスタイルは当時は『グレボ』とも呼ばれており、彼らはその先駆的グループと見なされています。
彼らの展開した“ロック+ダンスミュージック”アプローチの音楽性は、後に成功を収める〈JESUS JONES〉や〈EMF〉から日本の〈電気グルーヴ〉にまで影響を与えただけでなく、「マッドチェスター」を経て「ビッグ・ビート」「インダストリアル・メタル」「レイヴロック」「デジタルロック」などの90年代以降に一時代を築くジャンルへも及んでいます。
バンドは1996年に解散し、各自〈Golden Claw Musics〉〈Bentley Rhythm Ace〉活動へと移行しますが、2010年に活動を再開して現在もアクティヴな状態にあります。
02:DUBWAR|ダブウォー
アルバムデビュー:1994年
現在は〈SKINDRED〉に在籍し、過去に〈SOULFLY〉などのメタルバンドにもゲスト参加の経験のある、ラガマフィン系の本格レゲエ・ディージェイ・スタイルのヴォーカリスト、ベンジーがかつて在籍していたUKウェールズ出身のグループ。
UKエクストリームの老舗イヤーエイクに所属しており、その中では毛色の異なる変わり種として強い印象を残していました。
英国伝統の“レゲエ/ダブ meet ロック”のスタイルと、USミクスチャーのヘヴィネスとダイナミズムを兼ね備えたスタイルながら、そのどちらとも一線を画した強烈な個性を持ったミクスチャー・サウンドを確立しており、やや類型的なモダンメクスチャーを展開する〈SKINDRED〉とは明確に基本姿勢が異なっています。
エッジィで通好みなリスナーから支持され、各シーンでそれなりに注目を集めるも、2枚のアルバムを残して解散。
しかし、2014年のリユニオンを経て本格的な活動再開が実現し、2022年にはスタジオ・フルアルバムの新作もリリースており、現在のところ〈SKINDRED〉も並行して活動というかたちをとっています。
03:SENSER|センサー
アルバムデビュー:1994年
UKエイジアンのメンバーと女性ヴォーカリストを擁する、レイヴメタル・バンド。
マッドチェスターからビックビートにも連なる、“ダンスミュージックmeetsロック”という、英国のお家芸を基調としたスタイルですが、USヘヴィミュージック/ミクスチャーも取り入れた、よりヘヴィでインダストリアル・テイストも漂わせるアグレッシヴなサウンドが特徴です。
ただし、アルバムによっては、ややアンビエントに傾いた作品もリリースしています。
大きくブレイクしてメジャー展開することはなかったものの、個性的なサウンドが根強いリスナーから根強い支持を集めており、現在も活動を続けています。
04:Fun-Da-Mental|ファン・ダ・メンタル
アルバムデビュー:1994年
〈THE CULT〉の原型でもある〈SOUTHERN DEATH CULT 〉でドラマーを務めた、アキ・ナワズ ことハク・ナワズ・クレシが在籍していることでも知られるバンドで、当時イギリスのダンスミュージックシーンで存在感を増していた、“バングラビート”と呼ばれるジャンルを代表するグループのひとつ。
これは、“UKエイジアン”と呼ばれるインド/パキスタン系グループによる、エスニックテイストの強いダンスミュージックで、ヒップホップ,ダブ,レゲエ,ドラムンベースなど、雑多な要素を内包されたものです。
FUN-DA-MENTALも、英国お家芸の“ダンスミュージックmeetsロック”をベースにしつつ、エスニックテイストを効かせたスタイルで、初期はインダストリアル・ヒップホップ寄りの作風を展開していましたが、後年はUSミクスチャーテイストをも取り入れ、メタリックなヘヴィネスが強化されたサウンドも聴かせるようになりました。
脱退したメンバーによる派生バンドであるDETRIMENTALも存在しましたが、こちらはアルバム1枚で活動を終えています。
05:ASIAN DUB FOUNDATION|エイジアン・ダブ・ファウンデイション
アルバムデビュー:1995年
バンド名通りの、エスニックでダンサブルなダブサウンドを基調にラップヴォーカルを乗せた、UKミクスチャーサウンドで人気を博したバンド。
“UKエイジアン”系の中では、やや遅れて頭角を現した後発グループでしたが、その中では最も高い知名度と人気を獲得した出世頭となり、フェスも含めた来日公演も何度となく成功させています。
ダブ・テイストの強いバングラビートを展開した初期の頃から、マニアックなサウンドのわりには異例のプッシュを受けていましたが、ロック/メタルテイストをアップさせたアルバムがニューメタル系のミクスチャーブームにうまく乗ったことで、本格的なブレイク果たし、一気にメジャーシーンへと躍り出ることになりました。
06:SKUNK ANANSIE|スカンク・アナンシー
アルバムデビュー:1995年
90年代のブリットポップ全盛期に登場した、UKシーンでも異色のサウンドを聴かせるロックグループ。
英国ロックシーンでも有数のヴォーカリストである黒人女性シンガー『スキン』を擁し、経験豊かな腕利きミュージシャンによって構成されており、かのデヴィッド・ボウイがフェイバリットに挙げる実力派としても知られています。
USスタイルのラップメタルやグルーヴメタルや、英国伝統のデジタルロック/ビックビートなどのバックグラウンドも反映されたサウンドは、ヘヴィチューンからソフィスティケートされた曲まで多彩でハイレベル。そこに乗る、スキン卓越したソウルフルでエモーショナルな歌唱との相乗効果も加わり、UKミクスチャーとしては異例の成功を収めました。
07:DISCHARGE|ディスチャージ
アルバムデビュー:1982年
UKハードコアのパイオニアの枠を超えて、メタル界隈も含め世界的にハードコアの代名詞として認められる、DISCHARGEですが、アルバムデビュー以降の80年代半ばから90年代にかけては、作品ごとに大きく音楽性を変化させてリスナーに衝撃を与えてきました。
2ndアルバムでは、トラディショナルなヘヴィメタル・アプローチで物議を醸し、3rdアルバムでは独自のファンクメタル展開、続く4thアルバムではヘヴィなグルーヴ・メタルに接近していました。
この一連の作品は、いずれも一般的には保守的なリスナーの不評を買い失敗作と断じられており、この時期は現在でも黒歴史の迷走期とみなされています。
しかし、ファンク路線の3rdアルバム『Massacre Divine』では、過極めてユニークかつ完成度の高い、オンリーワンの個性派ファンクメタル・サウンドを確立していました。
これは、現在の各国のミクスチャー・シーンでも類を見ないものであり、ハードコア系のミクスチャーを語るならば、是が非でも押さえておくべき重要作と言えます。