Contents
- 1CATEDRAL(カテドラル)登場以前にもドゥームメタルバンドが存在していた?
- 1.1ドゥームメタルのルーツとなったプレドゥームメタル
- 1.1.1WITCHFINDER GENERAL|ウィッチファインダー・ジェネラル
- 1.1.2TROUBLE|トラブル
- 1.1.3PENTAGRAM|ペンタグラム
- 1.1.4SAINT VITUS|セイント・ヴァイタス
- 1.1.5CANDLEMASS|キャンドルマス
- 1.1.6STILLBORN|スティルボーン
- 1.1.7人間椅子
- 1.2ストーナーロックのルーツでもあるドゥーミィでダウナーなグランジ系ヘヴィロック
- 1.2.1ALICE IN CHAINS|アリス・イン・チェインズ
- 1.2.2SOUNDGARDEN|サウンドガーデン
CATEDRAL(カテドラル)登場以前にもドゥームメタルバンドが存在していた?
BLACK SABBATH(ブラック・サバス)を現代的なアプローチで再構築したドゥームメタルは、創始者CATEDRAL(カテドラル)の登場をもって生まれたジャンルで、それを契機に後続バンドも多数登場しムーヴメントとして活性化していきます。
しかし、それ以前に同じようなドゥームメタル的アプローチを実践したバンドがいなかったわけではありません。
初期ブラックサバスの影響下にある“SABBATHインスパイア系”とでも呼ぶべきヘヴィロック/ヘヴィメタルバンド自体は、80年代からすでに存在して活動を続けており、CATEDRALらドゥームメタルバンドもその影響を語りリスペクトを示しています。
第2期を迎えたBLACK SABBATHも含む初期ヘヴィメタルやNWOBHMシーンが疾走感/スピードを重視する流れにの中で、このスタイルが大きなムーヴメントに育つことはありませんでしたが、ドゥームメタルがスピード追求の極北デスメタルムーヴメントの停滞/終息と同時期に生まれたことを考えると象徴的ですね。
ドゥームメタルのルーツとなったプレドゥームメタル
これら、“SABBATHインスパイア系”のプレドゥームメタルバンドとしては、イギリスの
こういったバンド以外にも、90年代初期に米国ロックシーンを席巻するハードロックムーヴメント『グランジ』シーンにはBLACK SABBATHの影響下にあるグループが多く、CATEDRAL以前からドゥームメタル的なサウンドを聴かせていましたし、日本でイカ天バンドとしても名を成した、和製ドゥームの人間椅子もやはり80年代から活動していました。
こういった先駆者たちも、CATHEDRALの成功とその中心メンバーリー・ドリアン(Lee Dorrian)らが影響を受けたバンドとして名前を挙げたことなどから、2匹目のドジョウとして引っ張り出されることが多くなります。
中にはわざわざ日本盤CDがリリースされるバンドまでありましたが、残念ながらリスナーが求める初期CATHEDRAL的なサウンドとは異なるものだったこともあり、リアルタイムでは一部のマニア以外からは全く注目されませんでした。
後にムーヴメントが拡大してスタイルも多様化し、リスナーの層が厚くなって耳も肥えていくにともない改めて本格的な再評価が進みます。
WITCHFINDER GENERAL|ウィッチファインダー・ジェネラル
英国のNWOBHMシーンで活動していた“SABBATHインスパイア系”バンド。
同時期に本家が第2期BLACK SABBATHとして新しいメタル様式を作り出していたのに逆行して、WOBHMシーンで唯一初期BLACK SABBATHスタイルをベースにしたヘヴィメタルサウンドを持ち味にしていました。
また、魔女狩りをテーマにしたシアトリカルなビジュアルも売り物にしていて、マニアックなファンの注目を集めます。
ドゥームメタルムーヴメントの一時期はアルバムが廃盤だったこともあり、幻のバンドとしてプレミア扱いもされていました。
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80’米国ドゥームを代表格する存在で、90年代以降のバンドからのリスペクトも多いバンド。
“SABBATHインスパイア系”ながら当初はクリスチャンメタルとして活動しており、キリスト教団体がBLACK SABBATHの悪魔教(笑)に若年層が取り込まれるのを防ぐために送り込んだバンドとも考えられます。
90年代にはレイドバックしたサウンドにも定評があるカリスマプロデューサーリック・ルービン(Rick Rubin)と組み、70’sリバイバル要素を押し出したグランジ寄りのルーツロックスタイルへと移行、その後ストーナーの元祖的存在として祭り上げられるようになります。
強烈な個性を持つオルタナティヴハードロックバンドWARRIOR SOULのコリー・クラークをヴォーカルに招いたことで、オールドファンから賛否両論を浴びた時期もありました。
PENTAGRAM|ペンタグラム
PENTAGRAM(ペンタグラム)は70年代から活動しているベテランで、米国の“SABBATHインスパイア系”の中では最古参と呼べるバンド。
同郷のTROUBLEとは逆に、サタニズム/アンチキリスト風ギミックを前面に押し出しています。
初期の頃はBLUE CHEER(ブルー・チアー)的なUSハード/ヘヴィロックサウンドでしたが、次第にドゥーミーかつメタリックな要素を強めてゆき、“SABBATHインスパイア系”サウンドにアメリカンロック的な埃っぽさが同居したスタイルへと変貌します。
SAINT VITUS|セイント・ヴァイタス
初期BLACK SABBATHをベースにしながら、USハードロック,バイカーロック,ガレージロックなどのホコリ臭いUSサウンドのエッセンスをふんだんに詰め込んだアングラ感の強いサウンドが持ち味。
グランジBIG4の一画SOUND GARDEN(サウンドガーデン)も名を連ねていたオルタナティブ/グランジ系レーベル、SST Recordsに在籍するなど80年代のヘヴィメタルシーンとは一線を画して活動していたバンドです。
90年代USドゥームを代表するTHE OBSESSED(ジ・オブセズド)のウィーノ(Scott “Wino” Weinrich)もかつて在籍していたことがあり、ある意味ではTROUBLE以上のカリスマとしてカルト的人気を誇っています。
CANDLEMASS|キャンドルマス
CANDLEMASS(キャンドルマス)はBLACK SABBATHの第1期と第2期のスタイルをミックスして、クラシカルな欧州メタル的な様式美を強調したようなスタイルのスウェーデン産バンド。
最近ではこういった様式美系ヘヴィメタル要素の濃いスタイルは、彼らのアルバムタイトルEpicus Doomicus Metallicusからエピック・ドゥームとも呼ばれています。
“SABBATHインスパイア系”としては抜きん出た正統派ヘヴィメタル様式の強いサウンドと、ヴォーカリストメサイア・マーコリン(MESSIAH MARCOLIN)のオペラ的/演劇的な歌唱で完成した『大仰すぎるドゥームメタル』は、特に90年代以降のドゥームメタルシーンの中ではかなり特異な存在。
MEMENTO MORI(メメント・モリ),ABSTRAKT ALGEBRAl(アブストラクト・アルジェブラ),KRUX(クラックス)といった、同様のスタイルを持つファミリーバンドも存在していました。
STILLBORN|スティルボーン
STILLBORN(スティルボーン)は、80年代からゴシックメタルとBLACK SABBATH系サウンドをミックスしたような、独自のスタイルのヘヴィロックを創り上げていたスウェーデンのグループ。
ゴシックロックの系譜ともドゥームロックの系譜とも判別不能で謎の多い、知る人ぞ知る通好みな存在です。
実は、名作の3rdアルバムState of Disconnection(ステート・オブ・ディスコネクション)で日本盤デビューも果たしていますが、よりによってそれが彼らのディスコグラフィーでも特異でプログレッシヴな異色作だったため、あまりに奇妙で個性的すぎるカテゴライズ不能なスタイルにレーベルもマスコミも扱いに困り一切話題になりませんでした。
その後もピックアップされることは稀で知名度こそありませんが、PARADISE LOSTによってカヴァーされるなどドゥームメタルとゴシックメタルを繋ぐ存在と言える重要バンドです。
人間椅子
人間椅子は80年代に社会現象を起こすまでになった、伝説的音楽コンテスト番組『イカ天』こと『イカすバンド天国』への出場で注目を浴びデビューしたバンド。
BLACK SABBATHをはじめとした70年代ヘヴィロックを和旋律を融合させたサウンドと、文学的な引用満載の歌詞/世界観を組み合わせたスタイルは唯一無二のものです。
当初は、ねずみ男のコスプレもあってメタルファンからはイロモノ扱いされがちで、むしろアンダーグラウンドなサブカルロックリスナーが長年にわたって主なファン層でした。そういう意味では、同じ文学系ロックバンドの筋肉少女帯などとかなり重なる部分が多く、ライヴやイベントでの共演をはじめ交流も盛んでした。
その後、ドゥーム/ストーナーのメジャー化や和物ロックの流行という追い風もあって、地道な活動が実を結んでメタルファンかも知られるようになり、オジー・オズボーン主催のオズフェスト(Ozzfest)に参加するほどのポジションとなります。
ストーナーロックのルーツでもあるドゥーミィでダウナーなグランジ系ヘヴィロック
グランジはドゥームメタルに先んじて生まれた米国のロックムーヴメントですが、グランジ系のバンドは日本で人気だったグラムメタル(LAメタル)や産業ロックを否定し何かにつけてdisっていたため、保守的な(特に日本の)メタルファンからは蛇蝎のように嫌われていました。
とはいえ、グランジシーンにはパンキッシュなイメージを押し出すバンドが目立つものの、BLACK SABBATHら70年代ハード/ヘヴィロックをオルタナティヴスタイルで再構築するという、ドゥームメタルと同様のアプローチも少なくありません。
ドゥームメタルに通じるサウンドのバンドも数多く存在していて、特にグランジBIG4(四天王)のうちALICE IN CHAINS(アリス・イン・チェインズ)、SOUNDGARDEN(サウンドガーデン)の2バンドはそれを代表する存在ですし、MELVINS(メルヴィンズ)やTAD(タッド)などはストーナー/スラッジのルーツともされています。
これらグランジシーンからのドゥームメタルやストーナーロックに対する影響は、決して無視できるものではありません。
ベテランドゥームバンドのSAINT VITUS(セイント・ヴァイタス)などは、SOUNDGARDEN,DINOSAUR Jr(ダイナソー・ジュニア),SCREAMING TREES(スクリーミング・トゥリーズ)といったグランジシーンの大物を輩出したオルタナティブ系レーベルSST Recordsに所属していました。
ALICE IN CHAINS|アリス・イン・チェインズ
ALICE IN CHAINS(アリス・イン・チェインズ)は、BLACK SABBATHに影響を受けドゥームメタルに通じる音楽性も多いグランジシーンの中でも、特にヘヴィメタル寄りでMETALLICA(メタリカ)のブラックアルバムのネタ元にもなったの最重要バンドのひとつ。
BLACK SABBATHら70年代ロックやヘヴィメタル/ハードロックを彼ら独自のセンスで構築した、ダウナーでサイケデリックなヘヴィサウンドは、ヘヴィメタル,ストーナーロック,ニューメタル,ポストグランジらに強い影響を与え続けています。
SOUNDGARDEN|サウンドガーデン
SOUNDGARDEN(サウンドガーデン)は、グランジシーンのみならずUSロック界でも屈指の歌唱力と表現力を持つ超絶ハイトーンヴォーカリスト、クリス・コーネル(Chris Cornell)が在籍したことでも知られています。
デヴュー当初からBLACK SABBATHからの影響が取りざたされることが多いバンドで、ドゥーミィでダウナーなスタイルから、ドライヴするハードR&R,グルーヴィーなヘヴィロック,ポップな歌モノまでバリエーションに富んだスタイルは、初期のストーナーロックのみならずCATHEDRALの2stにも通じるものです。